ラブホテルのことがすべてわかります

●はじめに

この「ラブホバイブル」は、ラブホテルについて、その経営に携わった私自身の知識や経験をもとに書き下ろした解説書である
ラブホテルに関する解説書というものは過去にもいくつかあることはあるが、いずれもラブホテルの文化的側面にスポットをあてて、その生い立ちや特徴について分析してみようという、やや学術的な色合いが強いようである。書いている著者の方もラブホテルでの実務経験のない学者やジャーナリストが多く、一般の方が手にとって読んでみるにはやや敷居が高いもののように思う。一方、ラブホテル業界に携わる方には、ひっそりと目立たぬ存在でいることに重きを置いているのか、内から情報を発信しようとする姿勢は見られない。当事者がだんまりを決め込み、ラブホテルに興味がある周辺がああだこうだと憶測で発現をしているのが、この業界の特徴ではなかろうか? 
インターネットにはラブホテルに関する掲示板がたくさんあるが、その中では誤った知識に基づいた書き込みが多く見受けられるのも、きちんとした業界人による解説本が存在しないことに原因があるのだと思う。
そういう意味では、この本はラブホテルのシステムやその実態についてその内側から総合的に解説した初めての解説書であろうと思う。

内容に入る前に、私とラブホテルとの関わり合いについて若干、触れておきたいと思う。
私自身は今まであまりラブホテルに関心が強かった訳でもなく、それほどラブホテルのマニアであった訳でもない。そんな私がこの世界に入ったのは、たまたま父がラブホテルを2店舗経営していたものの、その経営がうまくいかず、「手伝って欲しい」と頼まれたのがきっかけであった。
当初はラブホテルで働いているというと何か特殊な人間ではないかと思われはしないかと世間体も気になるし、当然、迷いはあったものの、その猶予ならない状態を知るにつれ、「自分に何かできるなら」と33歳の時にこの世界に飛び込んだ。

以来、ラブホテルで寝泊まりをし、無我夢中で働いてきた訳であるが、残念ながら私が来た時には、既に1店舗は銀行の支払いもストップしており、間もなく競売となって他人の手に渡ることになった。だが、もう1店舗のラブホテルは幸運にも売り上げが順調に伸び、地域一番店と言われるまでになった。

しかし、ラブホテルの経営が順調にいくにつれ、次第に私と父との間で経営の方針を巡って対立が深まり、私は私はラブホテルの現場から離れることになった。平成15年6月のことである。
それから約1年半後の平成16年11月、融資を受けていた銀行からの要請で現場に戻った時、私のところのラブホテルは大変なことになっていた。わずかこの1年で売り上げが30%も急落、銀行への支払いも滞っていた。

私は全勢力を傾けて、失われた売り上げを取り戻すためのさまざまな手を打った。
効果はすぐに現れた。売り上げは急速に戻り始めた。
だが、時すでに遅しであった。平成17年6月、銀行はあっさりと債権をサービサーに売却した。サービサーは即座に仲介業者を通してラブホテルの買い主を見つけてきて、そこにラブホテルを売却することを迫った。それに対し、サービサーからの要求を跳ね続けた父であったが、ついにサービサーより破産の申し立てをされに至って、その要求を受け入れることになった。
平成18年後半、私のところのラブホテルは他の業者の手に渡った。
私のラブホテルでの闘いも幕を閉じた。

これを書いている今日現在、早いものでラブホテルを離れてから約半年が経過した。しばらくは放心状態であったが、ようやく心身とも落ち着き、ラブホテルに入ってから現在までのことを振り返ることができるようになるとともに、又、フリーの身であるが故に、包み隠さずラブホテルについて語ることができるようになった次第である。

この「ラブホテルバイブル」は、私が知りうる限りのラブホテルのシステムやその実態、及び、ラブホテルを利用する上でのアドバイスを盛り込んだつもりである。おそらくラブホテル通を自称する方ですら知らなかったことが多く記述されているだろうと思う。
この本の読者としては、ラブホテルに興味を抱いている方を主に想定しているが、現在、ラブホテルを経営している方やこれからラブホテルの経営をやってみたい方にも十分に役に立つ情報を盛り込んだつもりである。
あらかじめ断っておくが、この「ラブホテルバイブル」で述べていることがすべてのラブホテルに当てはまる訳ではもちろんない。ホテル間格差もあれば、地域差もある。
例えば、このラブホバイブルには「ラブホテルの清掃やルームサービスの実態」について解説している部分があるが、ここに書いてあるようなことを否定し、それを差別化と位置づけて取り組んでいるラブホテルもある。
但し、業界人の1人としてこの業界を眺め続けてきた者として、業界人であれば「確かにこういうところが多いよな〜」と頷いてもらえる内容になっているとの自負はある。

●ラブホテルの定義 ー ラブホテルとは何か?

ラブホテルについて語る前に、この本で対象とするラブホテルとはどのようなホテルを指すのかを明確にしておきたい。
現在、ラブホテルとラブホテル以外のホテル(シティホテル・ビジネスホテル等)との境界線が非常に曖昧になりつつある。又、ラブホテルの中でも「これはブティックホテル、これはモーテル、これはラブホテルテル」と別々に区分する考え方もあるし、ラブホテル業者の中には、法律や近隣住民達の手前上、「うちはラブホテルではありません。ビジネスホテルです」と宣言しているところもある。
こうした状況下に置いて、この本でいうラブホテルが一体どういうホテルを指すのかの基準を示しておかなければ、読者の方にも混乱が生じるおそれがあるだろう。

では、この本で扱うラブホテルはどのようなものを指すのだろうか?

まず誰もが思い浮かぶ、最も単純なラブホテルの定義は、”主にセックスを目的としたカップルが利用するホテル”というものである。
確かにこうした定義でも、現在のラブホテルの特徴の大方を捉えてはいる。ラブホテルを訪れる客のほとんどがセックスを行っていく。但し、定義としてはやや弱いように思う。
性の解放とともに、セックスということの持つ意味合いがやや弱まり、セックスという言葉とデートという言葉がほとんど同義語で語られるようになりつつある。そういう現状下で、殊更”セックスを目的とした”と強調めいた言い方をすることに、若干の違和感を覚えるのである。
ラブホテルにおけるセックスの比重が弱まりつつあることもある。現在、ラブホテルを利用する客は、セックスもするがそれだけではない。カラオケをしたり、ゲームをしたり、ビデオ鑑賞をしたりして時間を過ごす。ラブホテルの使われ方はデートの延長上にある”最終局面”としてのものから”デートそのもの”へと移行しつつあるのである。
しかも昨今のラブホテルは造りもビル形式が増え、外観は派手さを抑えて、一見するとシティホテルやビジネスホテルと見間違うものも少なくない。室内は広く、シンプルになり、その分ゆったりと快適に過ごせる空間作りが重視されている。
そうした背景をもとに現代人のラブホテルに対するイメージも一変、予約なしに気軽に泊まれるホテルとして出張のサラリーマンから友人同士や、はたまた旅行中の家族連れまでがラブホテルを利用するといった傾向も見られる。私のところでも、祝祭日ともなると子供のはしゃぐ声がロビーに鳴り響く。
一方で、シティホテル等ではダブルルームやキングサイズのベッドの比重がどんどん高まり、中には全室ダブルベッドを導入しているところもある。ベッドの品質へのこだわりに至ってはラブホテル以上のものがある。
もし、”主にセックスを目的としたカップルが利用するホテル”とラブホテルを定義したならば、そうしたシティホテル等でもラブホテルに位置づけられてしまうところが出てこよう。

ではラブホテルはどのように定義したらよいのか? 
ラブホテルは言うまでもなくホテルである。ホテルには色々ジャンルがあり、ラブホテルはそのジャンルの1構成要因をなすに過ぎない。そういう観点から考えると、「ラブホテルとは何か?」という問いを、「ラブホテルとラブホテル以外のホテルとの違いはどこにあるのか?」という問いに置き換えて検証したほうが、ずっと説明しやすいように思える。
そのような観点から考えると、ラブホテルとラブホテル以外のホテルとでは以前として決定的に異なるものが一つ存在することに気がつく。
それは料金システムである。ラブホテルは”時間貸し”を重視する料金体系をとっているのに対し、シティホテル等は”時間貸し”もない訳ではないが、やはりメインは”日貸し”である。
言うまでもなく、料金システムこそがホテルの使い方を客に提案するものである。ラブホテルがどのように使われ、シティホテル等がどのような使われるかはひとえにそれが持つ料金システム如何による。よく法律や条文等ではラブホテルの定義の一つとして「専ら異性を同伴する客の休憩(宿泊)の用に供する」云々の文言が出てくるが、それはあくまでも結果であり、その原因を作っているのはあくまでも料金システムである。
そこで私は、この本で扱うラブホテルを「休憩を重視した、いわゆる時間貸しの料金システムを前面に打ち出しているホテル」と定義したいと思う。
最近は”レジャーホテル・ファッションホテル・ブティックホテル・カップルホテル”といったさまざまな用語もあり、それぞれが別の意味を含んだものとして使われる向きもある。だが、これらも「休憩を重視した、いわゆる時間貸しの料金システムを前面に打ち出しているホテル」であるならば、すべてこの本で対象とするラブホテルである。
(読者の方に混乱を招くおそれがあるので、レジャーホテル、ブティックホテル、ファッションホテル云々といった言葉はここでは一切使わず、すべてラブホテルという言葉で統一させて頂くことをここにお断りしておく。)

もっとも、あまりこうした定義にこだわらなくても、表向きはどうであろうが、ラブホテルとそれなりに地元で認識されているホテルを読者の方それぞれの頭に描いてもらえば、ほとんどの場合は支障がないだろうとは思う。

なお、最近では「類似ラブホテル」という言葉をよく聞くようになった。
類似ラブホテルとは、ラブホテルに類似した形態で営業するホテルをいい、私が知る限りは、警視庁が平成18年に全国の警察に向けて発した通達の中で使われたことから普及した言葉ではないかと思う。

この類似ラブホテルという言葉は、”あくまでも風営法の届け出届け出があるものだけがラブホテルであり、その届け出がないものはラブホテルではなく、ラブホテルに似せた存在に過ぎない”という勝手な解釈を含んだ意味合いを含んでいることは間違いないが、それでは、私たち一般人が指しているラブホテルの半分以上が、実はラブホテルではないということになってしまう。

一体いつから、警察が日本語の意味や定義を決める権限を持つようになったのか?

ラブホテルというのは法律用語ではない。いわば自然発生的に生まれ、根付いた”日本語”である。
警察であろうが、誰であろうが、勝手に解釈を変更したり、一定の意図を持ってねじ曲げることは定義することは許されない。その言葉の持つ意味合いは、各々の日本人の胸の内に存在し、そして今後も培われていくものである。

しかし、警察がラブホテルの定義をしたことの影響は着実に広がっている。
マスコミをはじめとして、「ラブホテルというのは風営法に定義されたホテルである」「風営法の定義に当てはまらないものは、一見、ラブホテルには似ているが、実はラブホテルではない」なんて馬鹿げた論調が繰り広げられつつある。
このままでは、本当に、ラブホテルがラブホテルではなくなってしまいそうである。

ラブホテルというのは、法律によって定義され、法律によって存在を位置づけられている存在ではない。それは法律を超越し、今や日本社会に根付いた一つの文化であり、一つの業種なのである。

勝手に警察がラブホテルの定義を決め、それ以外を類似ラブホテルなどと呼ぶことは私は許されないことだと思う。よってこのサイトでは類似ラブホテルという言葉は、その類似ラブホテルという説明そのものをする時以外は基本的に使用していないことを、ここにお断りしたいと思う。
どんどんご意見、ご質問お寄せ下さい。


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