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割引券の活用

割引券を発行しているラブホテルは多い。これらが目的とすることは、あくまでも客に対する利便性の提供ではあるが、何らかの犯罪発生時において客を特定するツールとして役立つこともある。

割引券には、通常、連番がついている。これはラブホテルにおいては主にフロント係の料金間引き防止が第一義的な目的である。フロント精算をするラブホテルで割引券等を発行すると、客からは通常の料金を頂きながら、実際には客の料金には割引をきかせ、差額を懐に入れるといったことが非常に発生しやすいのである。よって割引券が紛失しないように連番を打ち、厳重に管理する。(但し、ラブホテルにおいては割引券を持ち帰らない客も多く、そうした割引券を利用すれば簡単に不正ができてしまうのであるが)
そしてこの連番の第二義的な目的が客の特定である。

以前、私のフロントタイプのラブホテルで部屋を荒らされる事件が発生した時のことである。室内にはコップや灰皿のガラスが粉々になって飛散し、電話線は切られ、床にはジュースがまき散らされていた。とりあえず警察に被害届を出したが、案の定、警察の対応は素っ気ないの一言である。客室には客が飲んだ後のビールの缶やタバコの箱が残されていたが、水に濡れており指紋採取は不可能だというし、その客が忘れいった売上表のようなものもあったが、一瞥しただけで警察側はポイとこちらに返した。詳しくは、第九章で説明するが、フロントタイプに対する警察の対応は素っ気ないの一言である。
フロントにはカーテンが垂らしてあるので、フロントは直接は顔を見ていなかったし、監視カメラも録画してはいなかった。部屋を荒らしていった客は宿泊客であり、宿泊客の車のナンバーチェックはしてあったが、フロントタイプでのことであり、どの車がその客の車かはわからない。
こうなると残された手がかりは割引券しかない。その客にはフロント係が当店で発行している割引券を手渡していた。どの客室に入った客にどの番号の割引券を渡したかはすべて控えてある。
しばしその連番の割引券を持った客が来るのを待った。そしてついにその割引券を持った客がやって来た。だが、この時は残念ながら様子をみることになった。フロント係が「この人ではない」と証言したということもあったが、最大の理由は事件発生時に控えた宿泊客のナンバーと一致するナンバーの車が駐車場に見あたらなかったことである。私のところのラブホテルは郊外にあるので、ほとんどの客は車で来店する。その車が見あたらないということは、もしかしたら連番の控え間違いという可能性も考慮しなければならない。フロント係が忙しい時には割引券を渡したり渡さなかったりすることがあり、その場合にはどの客室の退出者にどの連番の割引券を渡したかという記録がずれて記録されることもあるのだ。100%断定できない以上、秘匿性を重視するラブホテルでは慎重にならざるを得ない。結局、これが割引券の限界といえば限界である。


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