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ルームサービスの配達

ルームサービスや備品(以下、ルームサービス等)の客室の配達はラブホ側にすれば、とてもやっかいな仕事である。客室への配達係専属がいる訳ではないので、フロントやメイク係がすることになるが、どうしても余分な仕事といった位置づけになり、スタッフ間でも敬遠されがちである。
実際、私のところのラブホはフロントタイプなので、フロントが現場を離れる訳にはいかないのでメイク係がそうした配達をすることになっているのであるが、 メイク係に電話しても嫌な返事をされたり、場合には「忙しい」といって怒られたりするものだから、フロントが泣く泣く持ち場を離れて配達をしにいくことも多い。そのため、いつもフロント要員がフロントにおらず、業務に支障が出始めている。なんとかしなければと頭を悩ませている問題の一つである。

さて、このルームサービス等の客室への配達であるが、このやり方にはいくつかある。よく行われているのが、あくまでも客と接しないように玄関にこっそりと届けた後に、客室のチャイムを鳴らすというものである。ラブホの客室玄関のドアの前や内側には通常、ルームサービス等を置く棚が設けられているので、そこに置いてからチャイムを鳴らすのである。客がチャイムでルームサービス等が来たことを知って玄関に出たときには、すでにその棚にはルームサービスが置かれており、客とラブホのスタッフが顔を合わせずに済むというものだ。
例えば私のところでは、客室玄関のドアを開けた中にルームサービスを置く棚があるので、まずルームサービスの注文をフロントで受けた時に、「ドアの鍵を開けてお待ち下さい」と頼んでおく。うちのラブホでは電気錠を採用していないので、鍵をこちらで開けることはできない。そのため事前に鍵を開けておいてもらう必要があるのだ。そしてルームサービスを届けにいったら、黙って玄関のドアを開け、棚にルームサービスを乗せたら、ドアを閉めてから客室のチャイムを鳴らして立ち去るのである。
このようなやり方ではなく、玄関のチャイムを鳴らし、出てきた客にルームサービスを手渡しするラブホも多い。どちらがよいかは一慨にはには言えないが、顔を見られたくないカップルには私のところでやっているような黙って置いてからチャイムのほうが喜ばれるであろうとは思う。

さて、こうした客室への配達業務であるが、対面接客をしないことを前提としているラブホにおいてお客と接点をもてる数少ない機会ということもあり、さまざまなユニークな客の実態がラブホのスタッフ間では恰好の話題となってよく飛び交う。
よく見受けられるのが、女性のあえぎ声がドアを開けた瞬間に客室から聞こえてくるというものである。ルームサービス等を頼んだのだから、間もなくラブホのスタッフがやってくることぐらいわかっていそうなものであるが、欲望の頂点に達した客にとってはそんな構ってられないらしい。中にはドアを開けたら玄関で真っ最中ということもある。
先日も、うちのフロント係のH子から聞いたのであるが、H子がルームサービスを届けようと玄関のドアを開けたら、目の前で女性を男性が後ろから攻めまくっていたという。しかも止める気配もなく、H子は慌てて玄関のドアを閉め、しばらくどうしようかと迷った挙げ句、玄関の前にルームサービスを置き、チャイムを鳴らして帰ってきたとのこと。一体その客はどういうつもりであったのかは理解に苦しむところである。
こんなこともあった。これもうちのフロント係のC子が大人のおもちゃの注文を受けて届けようと客室の玄関のドアを開けたら、これもまた目の前で男が女を攻め立てていたという。でもこのカップルは先の事例と違い、フロント係を見てびっくり仰天した顔をしたとのこと。おそらくこのカップルは玄関を開ける前にチャイムがなると思い、チャイムがなったらドアから手だけを出しておもちゃを受け取るつもりであったのであろう。

他にもよくあるのが、玄関のドアを開けた瞬間、待ってましたとばかりに上半身裸、又は、全身裸であそこをだけを手で押さえながら飛び出してくる男性客である。女性では、まれに貸し出したコスプレのセーラー服やナース服を着て出てくる方もいるようだ。余程、自らのコスプレ姿に自信があっての行動だろうと思う。
私も手が空いている時はよくルームサービスを部屋まで持って行くのであるが、鍵を開けておくように頼んであったのにも関わらず、よく鍵が閉まったままであることが多い。その場合には仕方なく、玄関のチャイムを鳴らすのであるが、これまたなかなか出てこない客が多いのには閉口する。今これを書いている先ほどもルームサービスを届けに行ったら、注文を受けた時に頼んであったのに鍵が空いてない。何度チャイムを鳴らしても出てこないし、一旦、フロントに戻り、内線をかけても出ない。仕方なくしばらく客からの内線を待っていると、「ルームサービスまだですか!? 遅いわね!」との電話が。
「先ほどお持ちしたのですけど、チャイムを鳴らしても出ていらっしゃらなかったものですから」と答えると、「あっ、そう、お風呂に入っていたから」と。誠に勝手な客である。

もちろん、そのような客ばかりではない。得に最近では若くてかわいい子でも、堂々と出てきて渡す際に「ありがとう」とにっこり笑いかけてくれることもある。当初、こちらのほうがなんだか恥ずかしくなって客と目を合わせることができなかったが、最近では私も馴れ、目を合わせることができるようになった。そしてそのような客に出会えると、ただえでさえ客とのふれあい職場での事であるから、胸にじーんと温かいものを感じるのである。
とても面倒であり、ラブホのスタッフには敬遠される配達業務であるが、実は私にはそれは誰も知らないささいな楽しみの一つなのである。


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