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スタッフによる忘れ物の横領

私 「うちのカレーライスはいまいちかもしれないな」
O子 「そんなことないですよ。あのカレーはおいしいですよ・・・・・・(一瞬沈黙)、というかいい匂いしてますね」
(言い直しても、もう遅い)

サンプルで送ってきたコーヒーを試飲しながら
私 「このコーヒーはどう思う?」
A子 「今までのコーヒーに飲み慣れたら、飲めませんね」
(おいおい、そんなにいつも飲んでいるのかい)

私 「おにぎりというのはなかなか作るのが大変だな〜。おにぎりを止めて、焼きおにぎりだけにしておこうか?」
T子 「焼きおにぎりだけで十分だと思いますよ。あの焼きおにぎりはおいしいですもの」と言ってから、慌ててこう付け加えた。
 「私もあの焼きおにぎりをよく買うんですよ」
(うちで使っている焼きおにぎりは業務用で、市販はされていない!)

以上は、私とうちのスタッフとの実際の会話の一例である。明らかに常日頃から、うちのスタッフがホテルの備品を懐に入れていることが伺える。

宿泊産業であるラブホには、一通りの日常生活用品が揃っている。リネン室にはシャンプー・ボディソープ・ティッシュ・コーヒー・タオル・ライター・ナプキン・スキン等々数多くの備品が置かれているし、厨房や台所、冷蔵庫にも飲料やルームサービスの食材が多く置かれている。こうしたものは、あまりにも数が多くて在庫管理が不可能だ。
*リネン室に積まれた備品類の数々。これだけの備品、どうやって管理する?

在庫管理ができないということは、従業員がそうしたものを持ち帰ってもわからないということを意味する。持ち帰ってもわからない以上、人間の本質を考慮するに、相当そうした行為が行われていることは想像に難くないことは、上記の会話の例でも明らかである。
それどころか、私のところでは在庫管理が行われているジュースやお酒やルームサービスに使う冷凍食品等々まで、毎月毎月、消えていく。こうした事も問題視しているが、それ以上に一番困るのは客の忘れ物を横領してしまうメイク係がいることである。
客室に忘れ物をしていく客は多い。一番、多いのは飲料水やお菓子・カップ麺といった類いであり、一月もすると段ボールに一杯になるぐらいの量である。
そうしたものは取りに来る客が少ないこともあり、メイク係が自分たちで分け合ってしまうのだ。
それでも客が取りに来ないのなら支障はないのだが、希に取りに来る客もいることはいる。そういうときになって慌てふためき、「そうしたものはありませんでした」と苦肉の言い逃れをすることになる。
私のところのラブホで「時計を忘れた」という客からの電話が入った時のことである。しかし客室をいくら探しても見つからない。その旨を相手に伝えると、客は怒り警察に通報した。その途端、いくら探しても見つからなかった時計が客室から発見された。誰かがいったんは懐に入れたものの、事が大きくなりそうになって慌てて元に戻したのであろうと思われる。
こうした従業員による忘れ物の横領は、よそのラブホでも似たような状況のようだ。私の知人がラブホから出てすぐに飲み物を忘れてきたことを思い出し、電話を入れたら、「もう処分しました」と言われたと怒っていたのを耳にしたこともある。既に、メイク係の胃袋に入ってしまった後であったのであろう。
もっともこうした事に関しては、従業員にも言い分がある。それは「私が拾ったのだから私のもの」といった意識であり、ラブホオーナー側に対して「どうせ、自分達のものにしてしまうのでしょう」といった意識である。
後半の「どうせ自分のものに・・・・・・」は当たらず遠からずであるが、「私が拾ったのだから・・・・・・」は誤りである。
遺失物法では、「船車建築物その他の施設の占有者のため之を管守するものその他管守する場所に置いて他人の物件を拾得したるときは速にその物件を占有者に差し出すべし。この場合において占有者をもって拾得者と見なし本法及び民法第240条の規定を適用す」(第十条)と定められている。やや古めかしい表現であるが、これをラブホの忘れ物にあてはめて説明すると、ラブホの客室内の忘れ物を従業員が拾った場合には、それをすぐにラブホの経営陣に差し出さなくてはならず、そしてラブホの経営陣(法人の場合は法人)が拾得者として権利義務を有することになるということである。
ここで言う”拾得者としての権利義務”とは、「七日以内に警察に届け出なければならない」という義務、「持ち主が現れた場合には謝礼を、現れなかった場合には忘れ物の取得できる」という権利を指す。
ただ、いちいち警察に届け出ているラブホは少なく、しばらく保管した後に取りに来なければ、ラブホのオーナー一族の判断で処分しているというのが実情であろう。

【参考文献】
ホテル旅館営業の法律講座 (ホテル旅館経営選書)
模範六法〈2007(平成19年版)〉


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