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一風変わった客達

自分の常識でははかれない人はどこの世界にもいるものである。ここでは最近、うちで噂の個性溢れる客達の姿のいくつか紹介しよう。

1.生中(なまちゅう)の女

年齢は30歳前後ぐらいだろうか、やや小柄、顔はどこにでもいるようなごく普通の女性である。だが、彼女には普通ではないことがある。それはほとんど毎日のように、それも日に2回も3回もやってくることである。もちろん、相手の男性はいずれも別人である。
おそらく、出会い系のメールかダイヤルツーショットといったもので男性を見つけ、売春行為をしているのであろう。昨今、デリヘルで働く女性は多いが、この女性はいわば、デルヘルに所属していない”自営組”と言える。たぶん、この方が遙かに稼ぎもいいことであろう。但し、本番を拒否できるデリヘルと違い、自営組はすべて本番を覚悟せねばなるまい。最も昨今の女性は、本番をするかしないかなんて、たいした差だとは感じてはいないのかもしれないが。
ところでこの女性、部屋に入ってしばらくすると、必ず無料ドリンクサービスの生ビールを注文する。それもいつも「生チュウお願いします」という言い方をしてくる。
私のところで出している無料の生ビールは生(中)ではなく、生(小)なのであるが、彼女はナマチュウ、ナマチュウというので、いつしか私達の間では、その女性のことを”ナマチュウ”と呼ぶようになった。
ある時、フロントが少しいじわるをして「生中お願いします」と電話がかかってきたので、本当に生(中)を持って行った。彼女も馴れてしまっていて、「サービスの」という前置きをつけないことが多くなっていたので、その足をとった訳だ。この場合は無料ではなく有料である。以来、彼女は、「サービスの生ビールお願いします」という言い方に変わった。もはや彼女は”生チュウ”ではなくなった訳だ。
しかし、あれだけの男性と本番行為を続ける女性がいるということ自体、驚きである。性病を持っている可能性も少なくないだろう。
皆さんもメールで売春をしかけてくる女性にはくれぐれも御注意頂きたい。
2.ミイラ男
年齢、不詳。男性であること以外、何もわからない。最近、週に1〜2回のペースでやってくる客である。首から目元までサポーター?のようなものですっぽり顔を覆っている。そして頭には帽子。全く顔が見えず、その特異なスタイルを見ると、フロントの誰もがぎょっとする。
風貌のみならず、その行動もとても普通とは異なっている。
タオルを頭の上にかけて、廊下やロビーをうろうろしたり、メイク係が掃除している客室を開けっ放しになっている玄関ドアの隙間から覗いて、様子をじっと伺ったりする。
客室内でも、玄関のドアをずっと開けっ放しにして、手だけ廊下に出していたり、ドアの隙間からずっと廊下の様子を伺っていたり、そしていきなり廊下に飛び出し、エレベーターのところまで走ったかと思うと、又、引き返したり。
一度、客室玄関ドアを開けてその客が外を伺っている時に、私はわざとその客室の前を通ってみた。すると一旦はドアを閉めたものの、又、すぐにドアを開けて外の様子を伺っている。ドアの開閉方向とは逆の方向で立ち止まっていた私には気づいていない様子であったので、私は「何かお困りでしょうか?」とドアの向こうの相手に尋ねてみた。「別に」とその客は答えて、慌ててドアを閉めた。だが、私が立ち去ると、再びドアを開けて様子を伺っている。もちろん、その度にフロントではドアが開いたという警報音が鳴り響くので、フロントもコンピューターの前から離れられず、閉口である。
その客は、どうもデリヘル嬢を呼ぼうと思って来ているみたいで、その客が来ると、必ずデリヘル業者から「部屋に電話をつないで欲しい」とフロントに外線が入る。それ自体は希にあることであるが、それでもデリヘル嬢が来なかったり、来てもすぐに帰ってしまうこともある。ホテルでは外線をかけると、その料金が自動的に客室利用代金に加算されるのであるが、その客が出てから利用明細をみると、毎回電話代が何千円もかかっている。いつも2時間ぐらいの休憩利用なので、この金額は尋常ではない。
客室自体は、その客がチェックアウトした後に点検に入っても、特におかしなところはないが、それ以外はすべてが変なのである。
3.軍手男
何故か、いつも軍手をしてやってくる中年の男性である。それもとても汚れた軍手である。そして両手には大きな紙袋2つ。こちらもデリヘル目的の客である。
デリヘル嬢のチェンジはよくするみたいであるが、それ以外は特におかしいところはない。態度も普通である。しかしやはり気になるのは紙袋の中味である。
「何が入っているのだろうね」と皆で話し合っていた矢先、うちのホテルに来るやいなや、フロントの受付で「電話を貸してくれないか?」と言ってきた。
「電話は貸せないのですが」とフロント係が答えると、「なら、ちょっと電話してくるから、荷物を預かっててくれないか」とフロントに置いていった。
そうなると、やはり気になるのは、その中味である。フロントがそっと上から中を覗いてみる。すると中にはセーラー服や女性物の靴といったものに加えて、男物の学生服が……。デリヘル嬢と二人してコスプレごっこをするのであろうが、皆、思わず爆笑である。
4.超絶倫男
この方も年齢は不詳の男性である。1人でやってきて部屋をとり、その後、女性が入れ替わり立ち替わりでやってきては帰っていく。いずれの女性も後からやってきて1時間半ぐらいで帰っていくところを見ると、どうも来る女性はデリヘル嬢のようである。1時間刻みぐらいで、それを最低でも3回ぐらいは繰り返す。そしてその度に、タオルと歯ブラシを追加で注文してくる。
ところで、私のところのラブホテルでは、2人を超えた場合は1人あたり2,000円のプラス料金を頂いている。
この人の場合、常に部屋にいるのは2人であるが、女性が入れ替わっているので、当方の規定ではやはり料金の加算の対象となる。例えば、デリヘル嬢を3人呼んだら、総利用人数は4人ということになるので、2人分の追加、すなわち4,000円の加算となる。
それでも、最初のうちは同じ女性が出入りしている可能性もあると思い、フロント係も見て見ぬふりをしていたらしい。
だが、こうも頻繁にやってくると、明らかに女性も違うし、見逃してばかりはいられない。そこで、ある時、フロント係が部屋に電話した。すると女性が出た。

「お客様、先ほどの女性とは別の方ですよね。そういう場合は2,000円の加算となりますが」

フロント係がそういうと、相手の女性は「それはどういうことですか!?」とびっくり。フロント係もしまったと思った。どうもその時いたのは、デリヘル嬢ではなく、彼の本当の彼女だったようなのである。つまり、その男性客はデリヘルを呼んだ後に、本当の彼女を呼んでいたのである。
その後、2人の間がどうなったかは不明である。


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