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空回り

今朝、再び、客に逃げられた。
今週は二度目である。フロントは一体何をしているのだ?と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、わたしのところこのラブホテルはとても”逃げやすい構造とシステム”である上に、フロントはとにかく忙しく、仕方がないと思われる場合も少なくない。一人でフロントをつとめながらも、タオルたたみやら無料の飲食サービスの準備がかなりあり、やたらと忙しい。
オープン駐車場の上、出口も表と裏の二カ所ある。ロビーはラブホテルは広い上に、客が何人もいると、誰が誰だかわからなくなってしまう。精算機は客室ではなくロビーにあるため、フリータイムや宿泊のチェックアウトの時間になると、ロビーは何組もの客が列をなすことになる。それでいて客室に通じているエレベーターから裏口までの距離が短く、しかもフロントの前も通らないで出て行けるので、さっと出て行かれてしまう。更にロビーにはドリンクバーやフリーアイス、雑誌やビデオが置いてあり、客が客室になかなか入らなかったり、客室からそうしたものを物色にきたりして、客が頻繁にうろうろしたりもする。
だからある程度は、もう仕方がないと私はわりきっている。
監視の体制を強めようとすると、もはやフロント係を2名体制にするしかないが、それでは逃げられるコストより監視のコストの方がはるかに高くついてしまう。
ほとんどの客は見ていなくても黙ってお金を支払ってくれる優良客である。払うものは払うし、払わないものは払わないのである。

とりあえず、私は半分諦めながらも、その時の様子をフロントのK子から聞いた。
K子によると、お昼の11時50分頃、チェックアウトしようとした客から「(フロントの)カウンターの上にルームキーが置いてあるよ」と205号室のルームーキーを受け取ったという。私のところのラブホテルは、まずチェックイン前に客にフロントから客室のルームキーを手渡す。客はチェックアウトの際には、そのルームキーをロビーにある精算機に入れて、料金を精算することになる。よって、ルームキーがカウンターに置いてあるということは、客が精算をせずに出て行ったということになる。
慌てて、K子はその205号室の部屋に電話をかけるもやはり誰もでない。そこでメイク係に見にいってもらったら、ものけの空だったとのことであった。

客室のドアが開くと、フロントの事務所にある会計機からは、大きなチャイムがなり(しかも、会計機のボタンで停止させるまでチャイムはとまらない)、モニター画面には客室のドアが開いたという情報が示される。
そこで、「ドアが開いたことには気がつかなかったの」とフロントのK子に尋ねたところ、その客室のドアが開いたところまでは確認していたという。でもほぼ同時に606号室のの客室のドアも開いたものだから、どっちの客がどっちだかわからなくなったという。
606号室の客はきちんと精算して帰り、205号室の客は精算はしてないのだから、やや今回はフロントのK子に油断があったようにも思えるが、とにかく普通なら2人体制でないとおいつかないほど忙しいフロントなので、責めることはできない。。

私はさっそく205号室に行き、中を確認した。ドリンクバーで使用しているプラスティックのカップとペットボトル、煙草の箱があったので、ゴミ袋を持ってきて、それらをタオルでそっとつかんで中に入れた。ドリンクのカップは、その中のジュースを洗面所で捨て、更にその中にティッシュを丸めて押し込んでからゴミ袋の中に片付けた入れた。水滴が縁にこぼれでないようにである。水に濡れると指紋の採取は大変難しくなる。

それから私は、205号室のドアが開いた時間をシリアル機(客室の状況記録したり、ドアの開閉を管理する機械)のモニターで確認した。11時41分にドアが開いたのは11時41分であることがわかった。それから防犯ビデオの録画ビデオで、その時間の映像を確認した。

逃げていった客はすぐに確認できた。
男性はちょっとおしゃれな服装と髪型をし、目にはサングラスをかけている。女性はちょっとかわいい感じの子だ。年齢は20代半ばから後半。エレベーターから降りてきて、精算機の前に立つも、精算する様子はない。笑いながら、精算機の前で二人してしばし立っていた後、ルームキーだけを精算機の横のフロントのカウンターにさっと置くと、そのまま出て行った様子が映し出されていた。いかにも精算しているかのようなそぶりだけしてみせたというところか。
私は次にその客がチェックインした時間までビデオを巻き戻し、二人がチェックインした時の状態を確認した。どうも私のとろこには初めて来たらしい。ロビーでしばらくどうしたらいいのかわからず、うろうろしている。女性はかなり荷物をもっている。ブランドのバッグに更にもう一つ。旅行客のようだ。
ごくごく至って普通のカップルである。繰り返し繰り返し、ビデオを見、笑いながら帰って行った姿を見るにつけ、”こいつら絶対に許せない”と怒りがわいてきた。
私は車のナンバーの控えを見た。その二人は泊まり客なので、車のナンバーは記録してある。私のところのラブホテルには正面と背後に駐車場がある。正面に車を停めた客は当然、正面玄関から入ってくるし、裏に停めた客は裏口から入ってくる。その客きは正面玄関の方からホテルに入ってきて、正面玄関から出て行ったことはビデオで確認できているから、正面玄関方面の駐車場に車を止めたはずだ。

私は、正面に停まっていた車のナンバーをチェックした。名古屋ナンバーの車が一台あることがすぐにわかった。他、数台は地元のナンバーである。
私は警察に被害届けを出した。無駄だとわかっているので、滅多に届け出ることはないが、今回は、ほぼナンバーも特定できている。絶対に捕まえてやる。私はさっそく防犯ビデオのその客の姿だけを編集したビデオと証拠品を持って、警察署に出掛けた。警察署では、警察官も真剣に話を聞いてくれた。そして「なんとか捕まえないといけないね」と警察官も言ってくれた。
”やれやれ〜、今回はなんとかなりそうだ”と私は安堵のため息をついた。

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追伸:
予想通り、案の定、その後、警察からは音沙汰無い。この手の事件に、警察はまるでやる気無しである。


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