ラブホバイブルラブホテル運営日誌>トラブルの連続


トラブルの連続

ようやくゴールデンウイークも終わった。なかなか大変なゴールデンウイークであった。忙しいという意味ではなく、従業員が辞めたり休んだりの連続で大変であったということである。

先月に雇ったばかりの40歳のメイク係のP子は、採用を決めてまず入社するまで10日間ほど待ってくれと言われ、4月の18日にようやく入社した。
そして来るやいなや、
「私は火曜と木曜日は子供がサッカーをしているので、5時には帰らないといけないんです」
「10時から7時までという勤務が月に数回あるけど、私はできません」
である。

勤務時間が午前9時〜午後6時以外にも午前10時〜午前7時の勤務も月に数回あることは面接のときにきちんと説明したはずなのに、入社してからこうである。
それに子供のサッカーの送り迎えのために午後5時に帰らないといけないと主張することにいたっては、会社をバカにしているとしか思えない言動である。所詮、ラブホの職場といってバカにしているのであろう。それでいて、面接の時には社会保険の加入を強く希望するという始末である。気分はアルバイト、しかし待遇は社員というまさに身勝手な考え方である。あきれたもんであるが、しかしまた、最近はこういうのが多いのも事実だ。
結局、P子は5月1日にやって来るなり、
「今日は出てこないでおこうと思ったのだけど、忙しいだろうと思って出てきました。今日で辞めさせてもらいます」と。
入社以来、不満そうな表情ばかり目立っていたから、すぐに辞めるだろうと思ってはいたのだけど、ゴールデンウイークの最中に、その日に来てその日に辞めるである。しかも本当なら今日から出てこないとこだけど、今日は来てやったといった言い方だ。
しかし従業員がそうであれば客も客である。客もまたおかしな客が多い。

その日、客がいることを知らずに、私がロビーに出た時のことである。自動精算機の前で、精算中の男性客とばったり出くわした。やや大柄な40代半ばぐらいの方である。自動精算機の横に置いた鞄からはデルヘルの紹介雑誌が頭を覗かせている。慌てて差し障りがないように奥に引っ込もうとしたところ、客が私に向かっていった。

「1万円を入れたのに5千円と画面に表示されている」

私は心の中でため息をついた。”またか!?”といった感じである。
「1万円は万札で入れたのですか?」ときくと、「そうだ」という。
自動精算機をみたら、正面の液晶パネルに入金5千円と書いてあり、まだ精算が確定する精算ボタンを押してなかった。そこで私がキャンセルボタンを押すと千円札が5枚戻ってきた。
私はまた、いつものごとくその男性に言った。
「この自動精算機はとても精密に作られており、札の認識を間違えるということは今までかつて一度もないのですが、間違いなく1万円を入れたとおしゃるのであれば、精算機の中を調べるのは時間がかかりますので、とりあえず1万円をお返しします。但し、身分を証明できるものを見せて頂きたいのと、指紋の照合等の必要があった場合には、ご協力の程お願い申し上げます」

そう言うと、「面倒くさいからいいや」とその男性は去っていった。ふうう〜。
しかし、単なる勘違いなのか、それとも私と目があった瞬間に犯行を思いついたのか?
だが、新札になってから、1万円を入れたのに5千円と表示されたという苦情が増えたことは事実である。中には頑として主張して譲らない客もいて閉口する。

おかしな客は続く。

「部屋が臭いんですけど」>

今度は、客室からの内線に出るなり、電話の向こうの男性がいった。
「どこが匂うのですか? お風呂場でしょうか?」
私のところのホテルでは、時折、風呂場の排水溝から異臭がすることがあるので、そのことを言っているのかと思って尋ねたら、「違う」という。しかし「違う」というだけで、相手はそれ以上自ら何も言おうとしない。
私は再度、「どのように臭いのですか?」と聞いても「臭い」としか言わない。
「煙草臭いですか」そうきくと、やっと「そんな感じだ」と答えた。

「ではお部屋を変わって頂けませんか」と私がいうと、「安い部屋はこの部屋しかないから、嫌だ」と。
「そしましたら、申し訳ございませんが、こちらとしてはどうしようもないんですが」と言って、お詫びして電話を切った。

やれやれと思っていると、今度は、「洗面所にコンタクトを落としたから、洗面所の下の扉を開けてくれ」と客が言っているとフロント係が私のところに言ってきた。
しかも、排水溝に一杯汚れが詰まっていて、そのために水止めの栓がうまくしまらなかったのが原因ではないかというような口調ぶりであるという。
ほんとに最近の客はなんでもかんでもホテル側の責任にして、自分は悪くないという客が非常に多いから閉口する。
ラブホテルの洗面所の下の扉には鍵がかかっていることが多い。うちもそうだ。特に何が有るわけではないのであるが、ラブホテルという場所柄、いたずら予防のためである。
フロント係が「どうしましょう?」というので、洗面所の下を空けてパイプを分解するつもりなのであろうが、果たして自分でできるのかどうか確認してくれというと、フロント係が客室に電話を入れて尋ねた。「鍵と道具をおかししますけど、ご自分でできますか?」

客は「できないから、来て、やってくれ」とのことであった。

私は道具片手に客室に駆けつけた。
相手の客はまだ20代半ばぐらいの男性客であった。私が中に入ると、相手の女の子はベッドのふちに向こうをむいたまま座ってじっとしている。
洗面所にいくと、髪の毛が絡まった割り箸が置いてあった。排水溝に割り箸を突っ込み、なんとかコンタクトレンズを取り出そうとしたようであった。割り箸に目を留めた私に、男性客が「髪の毛がたくさん詰まっていて、汚い」といった。
「申し訳ございません」と謝り、私は早速パイプを分解し、コンタクトを探したが、なかなか見つからない。
分解して外したところに置いたバケツにたまった水やら、配管の中にも指を突っ込み、探したがやはりない。

そこで、(コンタクトは)見つからない旨をいうと、男性客は「水栓がきちんとしまっていなかったことに気づかなかったのか?」と相手の女性の不注意をやや責めるように言ったあと、今度は私を睨んで言った。
「それにしても汚れがひどいですよね」
ほら、きたと思った。またまたこちらのせいにして、弁償させようという魂胆だ。
「定期的に清掃しているのですけど、すぐに汚れがついてしまって」と弁解いうと、男性客は更ににらみ付けるように「それにしても、汚れがひどいですよね」と再度言った。そこにはわざわざ駆けつけて作業した私への感謝の気持ちの欠片もない。
なんだか世の中の人間がどんどんおかしくなっているようだ。
私は「定期的に配管は清掃しているのですけが、使用頻度が激しいもので、すぐに汚れがたまってしまうもので。お役に立てずに申し訳ございません」と何か言い足そうたそうにしている客の部屋をそそくさと跡にした。

やれやれと思って事務所に戻ると、またしてもフロント係が言ってきた。
「お客さんが、「カメラは借りれるか」「コスプレはあるか?」「で、写真はとってもらえる?」と言ってますけど、どうしましょう?」と。

もう、いい加減にしてくれ〜!


ラブホバイブルへ戻る  戻る