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「ラブホ」の経営学―この道40年の第一人者が明かす、驚異の大儲け法

本の題名は「ラブホの経営学」であり、この本の表紙やラベルには「この道40年の第一人者が明かす、驚異の大儲け法」「もの凄く儲かるので誰にも教えなかったその秘密を初公開」という文言が並ぶ。
しかし一見すると、この本のどこを探してもラブホの経営に関する記述は皆無である。
今まで、本などでラブホそのものの経営が語られたはことはほとんどない。ラブホの経営は大企業や体裁を重んずる人は決して手を出さない業種であるし、そもそもラブホの設計や建設には専門知識は必要でも、ラブホの経営そのものには専門知識は必要ない。
ラブホの売上げを左右するは、そのハードと立地である。そうした状況下において、ラブホの経営は、どちらかというと管理人的な一面が強い。ホテルの経営というよりも、マンションの経営に近い側面を持つ。
マンションの経営は、オーナーは土地と資金を用意さえすれば、後はデペロッパーにお任せである。マンション建築後の管理すらデペロッパーに任せてしまうことが多い。オーナーはマンションの経営はしているけど、事業の経営者という側面は薄い。どちらかというと投資家という位置づけだ。
ラブホも状況は似たようなものである。ラブホのオーナーは資金を投じて器を用意する。器は設計士やゼネコン等が取り仕切る。そして、建設後はその舵取りはオーナーはその運営を奥さんや愛人が支配人となり、指揮をとる。支配人の仕事は、会社の経営というよりも管理の仕事である。人の管理、設備の管理等々。
そうした実情と照らし合わせてみると、「ラブホの経営学」と本書が唄ってはいるものの、ラブホの経営そのものに対する記述は一切ないことも理解できる。
ラブホには経営学なるものが存在していなかった。ラブホを建てるということは、経営というより、投資の側面が強いのである。そしてラブホは、設計がきちんとしていてば、後はそこそこの管理でも、客がどんどん訪れる恵まれた利回りの良い投資であったのが実態である。本書でも、ラブホに投資しようと、ラブホが利回りの良い投資であることを唄っているのも、こうした実情に基づいたものである。

さて、この本で、著者が言いたかったことはただ一つに限られる。
昨今、ラブホ業界全体が売上の減少に歯止めがかからない状態にあると言われているが、その原因はすなわち、ラブホ自身がシティホテル化を目指し、平凡な空間になりはててしまったことが原因であるという。そしていまこそ、かつての個性的で派手でエッチな空間、非日常空間を取り戻すべきだという。
このことが、本書で一貫して著者が主張していることであり、他にも補足的に、立地条件についても述べている部分もあるが、これは今までのラブホが心がけてきたことを簡潔に述べているだけで、目新しさはないだろう。
著者の亜美伊氏は、設計士であり、まさにこうした「個性的で派手でエッチな空間」を先駆けて開発し、ラブホの文化を創ってきたパイオニアである。
すでに設計士として引退して10年が経過するということであるが、自らH大好きと公言する氏が、早くかつて自らが音頭をとってきたラブホの時代に戻って欲しいという、懐愁の情を表明したものと考えるのが妥当な本であろう。
亜美伊氏ラブホが昔の姿を取り戻すことで、再び、現在の低迷から抜け出せると主張するが、異はそれほど単純ではないだろう。
ラブホの低迷は、バブルの崩壊、デフレの進行、激しい価格競争、そして性意識の変化(セックスが特別なことではなくなったため、特別な場所であるラブホにいく理由が薄れてきた)、そして急激な20〜30代の人口減少などの複合的な要因によるものである。
従来のような派手な非日常性を売りにすれば、客がどんど来るというのはやはり時代遅れの考えであろう。おそらく、このことは亜美伊氏自身もよくわかっているはずである。自らの引退を、計画的なものであり、力の限界を感じた訳ではないと言いながら、「この仕事はある程度若さや新しい知恵がないと駄目だ」と常に感じていたことが引退の理由の一つであったこともほのめかす記述がなされていることがそうしたことをほのめかしている。
ラブホはあくまでも、セックスをするための空間であり、そのためにはラブホは超度派手な空間演出の場でなければならないとしか考えていない著者にとって、”演出よりも居心地の良さ”、”空間よりも料金”という最近のラブホ利用者の意識の変化は、とても受け入れがたいものであったろうことは想像に難くない。
立地に関しても、郊外は「インターチェンジの付近」、都市では「繁華街から少し離れた裏通り」と述べているが、これもかつての常識である。需要が供給を常に上回っている現在においては、そういう場所は逆に競合店が多く、採算性は低くなりつつある。
それよりも現在は、重視しなければならないのは、いかに競合を避けるかということである。
ラブホの客室数なんて、シティホテルと違い、所詮20〜30程度である。利用者もあくまでも個人である。こういう状況下においては、観光客の多い観光都市ならばインター付近であるということは重要であるかもしれないが、そうではないありきたりの都市であれば、周囲に競合店がない場所であるということのほうが余程、重視しなければならない立地の条件である。
この本は、筆者がかつて大成功を納めただけに、かつての常識の束縛から逃れられない一面をさらけ出したものと捉えることができる。
もちろん、この本は、業界の著名人である亜美伊氏にとって最初の著作である上に、ただでさえ数少ないラブホに関する本であるということで、とても貴重な本である。
ただ願わくは、亜美伊氏には、「ラブホの経営学」ということではなく、氏が体験し、切り開いてきたラブホの変遷や文化をつづった著作を次回は期待したいところである。


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